音楽の力

 

そんな番組が1年に1回?くらいある。

とはいえ私は別にその特番の話をしたいわけじゃない。そもそも私はあの特番を観ている時に「音楽の力」を感じた経験は今のところない。

 

ただ、「音楽の力」というものは、確信を持って「ある」と言える。

それは映画のスタッフロールで流れる主題歌でも、ラジオから流れる週刊チャートでも、音楽プレーヤーのシャッフル再生でランダムに流れる曲でも、何処にでも潜んでいる。

ふとした時、或いはこちらが求めた時、音楽は度々私達に向けて「力」としか例えようのないものを与えてくれる事がある。

 

私自身、最近そう感じる事が多くなってきたのでこの記事を書いている。

私は昔から所謂ジャニーズ系が好きで、その中でも関ジャニ∞や嵐は何度もコンサートに通っているファンだ。また、それとは別にM.S.SProjectという、エンターテイメント集団なのか音楽グループなのかこれと称するものに迷う四人組のファンも続けている。(こちらに関しては気になる人は検索してみて欲しい。ビジュアルに戸惑わせてしまったら申し訳ないが)

その他にも米津玄師とか、福山雅治とか、映画やドラマで気になった曲とか、私のWALKMANにはバラエティに富んだラインナップが並んでいる。シャッフル再生で米津玄師の「Lemon」が流れた後にDALIの「ムーンライト伝説」が流れ出すような、そんな事が日常茶飯事だ。

 

移動中にはいつもイヤホンで音楽を聴いていて、お風呂でも聴いている。勉強してたり作業してたり、そういった時にも聴いてたりする。常に側にあるその音に普段は落ち着いたり楽しんだり、かと思えば何も思わなかったりする事もある。

ただし、たまにあるのだ。耳に流れ込むそのメロディが、心を鷲掴みにしたり貫いたり、そういった事が、たまにある。それは私の場合いつも私が落ち込んでいる時に起こり、威力の大小は問わずとも私の中に何かしらの痕跡を残してゆく。

 

たとえば、今年の春。

私は卒業旅行でヨーロッパに行った。

私はそこで度々失敗をしては自己嫌悪に陥り、その所為もあって思わずカッとなってしまった事が更なる自己嫌悪へと続いていった。

旅行自体は楽しかったけれど、帰りの飛行機の中で自らの行いを猛反省していた私は、丁度シャッフル再生で流れてきた米津玄師の「WOODEN DOLL」に耳を奪われた。

 

あなたが思うほどあなたは悪くない 誰かのせいってこともきっとある

痛みを呪うのをやめろとは言わないよ それはもうあなたの一部だろ

 

気が付いたら私は、眠る友人たちの横で泣いていた。止まらなかった。そんな事は初めてで、私は暫くその曲を繰り返しながら気持ちが落ち着くのを待った。そうしたらその後の気分が幾らか楽になって、静かに残りの旅路を眠って過ごす事が出来た。

 

あの時の衝撃はなかなか抜けない。

それまでもあの曲を聴いていた事はあったけれど、あのような感覚を覚えたのはあの時が初めてだった。後日同じ曲を聴いてもこれまた同じ衝撃は受けない。ただ、何となく聴く度に元気を貰えている気がする。そんな気がする。

あれは間違いなく、音楽の力だ。

 

似て非なる衝撃はあれから度々訪れた。

今年の秋、いつものようにシャッフル再生で流れてきた関ジャニ∞の「象」にも、それまで聴いてた時とはまったく違う衝撃に揺さぶられた。元々大好きな彼らの曲だから何度も聴いたはずなのに、それでも違った。好きな曲でさえも、その時の私の心情やその他諸々の状況によって、耳に届く音はその力を変える。

 

これからもどんどん君が素晴らしくなる 案外どんな場所にだって行けるよ
その足で踏み出せ!世界は変わる!

 

メッセージ性を持った歌詞が歌手の歌声と絡み合い、力を持つ。「象」はまさしくその通りで、必死に歌声を響かせる彼らから発せられる力にも、また突き動かされたのかもしれない。

 

 

そして最後に紹介する曲。

これは、この記事を書く事になったきっかけの曲だ。

私はその歌をずっと前から知っていたが、タイトルを見る度に意図的に避けていた。なんとなく、なんとなく聴くのが怖かったのだ。きっとただ絶望を歌う曲ではないと察していたからこそ、怖かった。

しかし今月、私は偶然にもその曲を聴いてしまう事となる。

タイトルは、「命に嫌われている」

 

「死にたいなんて言うなよ。」
「諦めないで生きろよ。」
そんな歌が正しいなんて馬鹿げてるよな。

 

開幕、そんな歌詞が朗読のように歌われる。

淡々と、淡々と、歌い上げられてゆく。

私はその歌をイヤホンから聴いた時、自分の直感は間違っていなかったのだと知った。何故なら本当に怖かったからだ。私は、その歌が怖くて、怖くて、それなのに聴くのを止められなかった。

 

それでも僕らは必死に生きて
命を必死に抱えて生きて
殺して あがいて 笑って 抱えて
生きて、生きて、生きて、生きて、生きろ。
 
この世に数多くある希望の歌に溜息をつくような始まりから、最後にはこれもまた一つの、希望に似た形の歌として変わっていく。
歌であると同時に叫びであるかのようなこの曲に私の心は真ん中から撃ち抜かれ、私はその後すぐにiTune Storeから同じ曲を探して購入した。あれだけ避けたがっていた曲を今では毎日のように聴いている。初めて受けたあの衝撃の味を確かめるように、一つ一つその歌詞を自分の中に問い掛けていくように、聴いている。
 
音楽の力、というものは恐ろしい。
時に人を傷つけ、時に人の心を動かし、時に人を癒す。
今日もまた、何処かで密かに誰かの人生を変えているのだろう。
もしかすると、私も、あなたも、そうなのかもしれない。